イーグルスのドン・ヘンリーが17日付けのワシントン・ポスト紙に寄稿した記事を見つけた。著作権問題などで積極的に発言している彼らしく、音楽業界の現状とその問題点について熱く語っている。名曲\"Hotel California\"で「1969年以降スピリットは失われた」と歌った彼の言葉には重みがある。ネット上で翻訳記事が見あたらなかったので全文を訳してみた。
私が音楽業界に入った頃、音楽は私たちの生活に不可欠で大切なモノだった。当時はアーティストとファンが繋がっていた。レコード会社は最先端のアーティストと契約を結び、FMラジオは非常に幅広いジャンルの音楽を提供していた。音楽は唯一無二のパーソナルな方法でファンに届いていた。私たちの文化は豊かで音楽ビジネスは健全で強力だった。
それが全て変わってしまった。
今日、音楽ビジネスは危機に瀕している。この3年間で売り上げは20%〜30%も減少した。レコード会社は子供たちが違法なP2Pファイル交換ソフトを使っていると訴えている。ラジオで自分の曲を耳にするアーティストは少ないのに、大手のラジオネットワークは所有規制のことで議会と揉めている。(訳注:1996年のラジオ局所有の規制緩和で、1社が何百というラジオ局を持つことが可能になって以降、さらなる規制緩和を求める動きがメディア界全体で続いていることを指していると思われる。)個人経営のレコード店はかつてないスピードで消えていっている。そして、アーティストはファンを含む全ての人と争っている。
従来の通説に反して、問題の根源はアーティストでもファンでもなければ、インターネットテクノロジーでもない。問題は音楽産業そのものなのだ。構造的な問題だ。かつては何百もの大小様々なレーベルがあった音楽業界は、今や合併と統合に向かって突き進むほんの一握りの無規制の多国籍企業によって支配されている。11月にソニーとBMGは合併を発表し、EMIとタイムワーナーも遅れは取らないだろう。この業界はわずか3社の多国籍企業によって独占されるようになるかもしれない。
この3つの会社の重役たちは音楽はただの商品であるとしか考えていない。彼らの前任者たちと違って、音楽は利益を上げることと同じくらいかけがえのない芸術であり、社会の指標であることに気づいていない。かつてアーティストたちは例えそれが無理強いであっても、レコード会社と有意義な関係を築いていた。それが可能だったのは、レコード会社は比較的小さくて身近で、アーティストと一緒に彼らの音楽を売ろうという意思があったからだ。今日ではほとんどのアーティストにとってこのような関係は不可能になってしまった。
今のレコード会社はリスクを嫌い独創的で有力な新人アーティストと契約をしようとはしないし、アーティストが音楽を作りプロモートする時のパートナーになろうとはしない。音楽が完成すれば、アーティストとその音楽との繋がりは希薄になり、ケースによっては繋がりが完全になくなることもある。彼らの世界では音楽はただの総称なのだ。あるメジャーレーベルの社長が最近、アーティストを「コンテンツプロバイダ」と呼んだことからもこのことはよく分かる。今のレコード会社がジョニー・キャッシュと契約すると思う?あり得ないね。
ラジオ局は以前はローカルで多種多様だった。DJたちは自分たちで番組の構成を考えたし、アーティストたちとも親しかった。今のラジオ局はその所有者によって番組の構成が決められて、エアプレイは獲得するものではなく買うものになってしまった。門戸が開かれてしまい、企業はラジオ局やコンサート会場やコンサートエージェントをいくらでも買収できるようになった。ラジオ局とアーティストの微妙なバランスは大きく変わってしまった。大手ラジオネットワークはかつてないほどの圧力をアーティストにかけることができるようになったし、実際にそれは行われている。アーティストがラジオ放送で持っていた自分たちの音楽との繋がりはほぼ全て失われてしまった。
かつてのレコード店は幅広いジャンルの音楽を提供する魔法の場所だった。現在の3大音楽小売業者はBest BuyとWal-MartとTargetである(訳注:Wal-MartとTargetは安売りのスーパーマーケットチェーンで、Best Buyは家電量販店のチェーン)。これらの店では商品棚のスペースは限られていて、新しいアーティストが登場するのをさらに難しくしている。有名なアーティストでさえロス・リーダー(訳注:いわゆる目玉商品。客を集めるために赤字覚悟の安値で売り出される商品のこと)として使われて迷惑を受けている。全米の小規模で個人経営のレコード店は次々と閉店していっている。そのうちのいくらかはP2Pの海賊行為の蔓延が原因だが、その他の大多数は今までアーティストとは全く関係のなかったスーパーとの競争が原因である。
おそらく海賊行為はアーティストが直面している最も厳しい問題だろう。アーティストは今よりも良い新しいビジネスモデルを望んでいるが、承諾も補償もなしに自分たちの音楽を勝手に使用するようなビジネスモデルは受け入れられない。キッズを訴えることはアーティストの望むことではない。彼らの多くは彼らの音楽が好きだと言っておきながらタダで音楽を欲しがるファンに裏切られたと感じているのだ。
この手の海賊行為の責任の多くは音楽業界にある。業界はすぐにこの問題に触れなかっただけでなく、P2Pユーザーに格好のスケープゴートを提供してしまった。多くのキッズはP2Pソフトの使用を正当化する時に、どうせレコード会社はアーティストに金を払わないのだから、傷つくのはレコード会社だけだと指摘する。これは明らかに間違っている。アーティストは食物連鎖の底辺にいるのだ。売り上げが急落したり、レコード会社がプロモーションを減らしたり、新人アーティストとの契約を減らしたり、所有している将来性のあるアーティストの数を減らした時に、最も打撃を受けるのは彼らなのだ。アーティストは明らかに影響を受けているが、多くの人は音楽業界が金持ちの多国籍企業によって支配されていることを知っているので、アーティストの痛みは表に出てこない。
アーティストたちは彼らの苦境は同様の経済的・政治的利害を持つ他のグループと変わらないのだということにやっと気づき始めた。変化をただ望むのではなく、彼らは戦わなくてはならない。ワシントンこそが自分たちの主張を訴えて答えを見つけるためにアーティストが行くべき場所だ。
したがって、メディアやラジオ局の複合化と戦っていようとも、公平なレコード契約と会社の責任のために戦っていようとも、あるいはレコード会社はアーティストを従業員ではなくパートナーとして扱うべきだと要求していても、メッセージの核は一緒だ。アーティストがレコード会社に参画することが認められるべきだし、公平で適切な待遇を与えられなければならない。これらの変革をレコード会社が自ら率先してやろうとしないなら、アーティストは法的な解決策を求めるしかない。端的に言えば、アーティストは自分たちの音楽をコントロールする権利を可能な限り取り戻さなければならないのだ。
*筆者はイーグルスのボーカル兼ドラマーでレコーディング・アーティスト連合(Recording Artists\' Coalition)の設立メンバー。
「レコード業界とメディアが音楽産業をダメにした」ってとこと、「音楽をコントロールする権利を取り戻さなければならない」という点には同意するけど、最後の方の「ワシントンこそが〜」ってとこは100%賛成とまではいかない。RACで積極的に活動してるドン・ヘンリーから見たらそうだろうけど、それだけで全ての問題が解決するわけじゃないと思う。文中で彼自身が言ってるように構造的・社会的な問題なのだから、権利を取り戻すだけではそれは変わらないと思う。
その辺にアメリカ的な考えが少し透けて見えるけど、それでも音楽界の超大御所が積極的に今の音楽業界の問題点を指摘する発言をしているのはいいことだと思う。日本じゃ絶対あり得ないもんねぇ。
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| ■ ビジネスって何でしょう? | |
| > 音楽はただの商品であるとしか考えていない ・・・ブックオフの社長(何かのインタビューでそんな事を言っていたらしい)を思い出しました。 | |
| 通りすがり (2004-03-14 10:51:30) |
| ■ 通りすがり | |
| いきなり追記です。すみません。 もちろん古本についてですよ。 ・・・あ、でもCDとかも扱ってるから一緒か。 | |
| 「ビジネスって何でしょう?」の補足 (2004-03-14 10:54:40) |
| ■ 訂正 | |
| 「名前」と「タイトル」間違えた・・・。 コメント欄、無駄に使ってすみません。 | |
| 通りすがり (2004-03-14 10:59:37) |
| ■ Unknown | |
| いえいえ、コメントありがとうございました。 確かにブックオフもただの商品としか見てないですよね。 ただ、だからこそあそこまでシステマチックな商売ができるし、 業績も伸ばせるんですよね。 ビジネスとしてはそれで正しいのでしょうけど、それが文化の発展に つながるかどうかは疑問ですが・・・。 | |
| Sawney Bean (2004-03-14 13:32:25) |







